ankuro.dev
← ブログ一覧に戻る
【開発記録 番外編】Claude Codeと経営戦略を壁打ちした——個人SaaSの料金設計ができるまで
2026-03-20#個人開発#SaaS#Claude Code#料金設計#AWS

【開発記録 番外編】Claude Codeと経営戦略を壁打ちした——個人SaaSの料金設計ができるまで

個人でSaaSを作るとき、一番悩むのが料金設計だと思う。

「いくらにすれば売れるか」「何を有料にすべきか」——これをClaude Codeと壁打ちしながら決めた記録をそのまま書く。


ターゲットを決めるところから始めた

最初に「誰に使ってほしいか」を決めた。

候補は3つあった。

  • 個人のAWSエンジニア(自分の設計を確認したい)
  • チーム・組織(複数人でレビューしたい)
  • コンサルタント・フリーランス(クライアントの設計をレビューする)

Claudeに「コンサルタント視点で課金ポイントを考えて」と投げると、ブランド入りPDFレポートやクライアントポータルが出てきた。確かに強いが、個人開発の初期フェーズで実装するには重い。

結局「個人エンジニア + チーム」に絞った。責任範囲を小さくして、まず動かすことを優先した。


回数制限が弱い理由に気づいた

最初は「無料3回・有料無制限」という単純な構成を考えていた。

ところがClaude Codeに指摘されて気づいた。

AWSのアーキテクチャレビューって、月に何回もやるものじゃない。

月3回制限だと「無料で十分」になってしまって課金動機が生まれない。回数よりも「何ができるか」で差別化すべきだった。


有料機能を機能で差別化する

課金ポイントを「回数」から「機能」に切り替えた。

無料プランは「問題を指摘するだけ」

「セキュリティに問題があります」まで。

有料プランは「どう直すかまで出す」

  • 改善ロードマップ(優先度・具体的な修正手順)
  • AI深掘りプロンプト生成(ChatGPT・Geminiに投げられる形式で出力)
  • AIへの追加質問・修正依頼(レビュー結果に対してその場で深掘りできる)
  • コスト最適化提案(プロプランのみ)

「問題があります」で終わるAIは他にもある。「何を・どの順番で・どう直すか」まで出るなら払う価値がある——そう判断した。


損益分岐点を計算した

価格を決める前にコストを計算した。

Claude Haiku(Bedrock)のAPIコストは思ったより安い。

条件 1回あたりのコスト
2,000文字入力(無料プラン上限) 約¥2.1
10,000文字入力(プロプラン上限) 約¥2.7

最悪ケース(全ユーザーが毎月フル活用)でも:

プラン 価格 Bedrockコスト最大 手残り
スタンダード ¥500/月 約¥51 約¥421
プロ ¥980/月 約¥335 約¥600

余裕で黒字になる計算だった。

ちなみに無料ユーザー1,000人がフル活用してもBedrockコストは月¥6,300。Vercelなど含めた固定費を合わせて月¥9,400。

有料転換率1.9%(1,000人中19人)で黒字になる。一般的なSaaSの転換率2〜5%を下回っても成立する設計になった。


価格は「責任範囲」で決めた

最終的に決めた価格はこれ。

プラン 価格 主な機能
無料 ¥0 問題指摘のみ・月3回
スタンダード ¥500/月 ロードマップ・追加質問・月10回
プロ ¥980/月 コスト最適化・月50回

¥980にした理由はシンプルで「Claude Codeのサブスク(約¥3,000/月)より明らかに安い」から。¥1,980だと「それならClaude Code使えばいいじゃん」と比較されて負ける。

高くすれば収益は増えるが、その分サポートや責任も増える。個人開発の初期フェーズでは「気軽に払えて気軽にやめられる」ほうが大事だと判断した。


英語対応を最初から組み込んだ

「日本語だけでいいか」という話もした。

結論は「UIを最初から英語対応にする」。理由は市場規模。日本語のみだとユーザーの上限が見えている。

技術的なコストはほぼゼロだった。

system_prompt = """
You are an AWS Well-Architected Framework expert.
Respond in the same language as the user's input.
"""

システムプロンプトを英語で書いて「入力言語に合わせて回答して」と入れるだけ。ユーザーは日本語でも英語でも入力できる。

UIはNext.jsのi18nで切り替えボタンを置く。Stripeは同じ商品にJPY・USDの2つの価格を設定して、UI言語に連動させる。

海外ユーザーには$5・$9で売れるので、¥500・¥980より単価が上がる。英語対応した分だけ収益率が上がる設計になった。


Claude Codeと壁打ちしてよかったこと

一人で考えていたら「月3回制限で有料無制限」という単純な設計のまま進んでいたと思う。

Claude Codeと壁打ちすることで:

  • 回数制限の弱さに気づけた
  • コストを定量的に計算できた
  • 英語展開の判断を素早く下せた

「経営の意思決定」をAIと一緒にやると、抜け漏れが減る。自分の思考の外側を補完してくれる感覚がある。

技術的な実装だけじゃなく、こういう使い方もある。



開発記録 #1:AWSアーキテクチャレビューAIを作る——設計思想と全体像