
【開発記録 番外編】Claude Codeと経営戦略を壁打ちした——個人SaaSの料金設計ができるまで
個人でSaaSを作るとき、一番悩むのが料金設計だと思う。
「いくらにすれば売れるか」「何を有料にすべきか」——これをClaude Codeと壁打ちしながら決めた記録をそのまま書く。
ターゲットを決めるところから始めた
最初に「誰に使ってほしいか」を決めた。
候補は3つあった。
- 個人のAWSエンジニア(自分の設計を確認したい)
- チーム・組織(複数人でレビューしたい)
- コンサルタント・フリーランス(クライアントの設計をレビューする)
Claudeに「コンサルタント視点で課金ポイントを考えて」と投げると、ブランド入りPDFレポートやクライアントポータルが出てきた。確かに強いが、個人開発の初期フェーズで実装するには重い。
結局「個人エンジニア + チーム」に絞った。責任範囲を小さくして、まず動かすことを優先した。
回数制限が弱い理由に気づいた
最初は「無料3回・有料無制限」という単純な構成を考えていた。
ところがClaude Codeに指摘されて気づいた。
AWSのアーキテクチャレビューって、月に何回もやるものじゃない。
月3回制限だと「無料で十分」になってしまって課金動機が生まれない。回数よりも「何ができるか」で差別化すべきだった。
有料機能を機能で差別化する
課金ポイントを「回数」から「機能」に切り替えた。
無料プランは「問題を指摘するだけ」
「セキュリティに問題があります」まで。
有料プランは「どう直すかまで出す」
- 改善ロードマップ(優先度・具体的な修正手順)
- AI深掘りプロンプト生成(ChatGPT・Geminiに投げられる形式で出力)
- AIへの追加質問・修正依頼(レビュー結果に対してその場で深掘りできる)
- コスト最適化提案(プロプランのみ)
「問題があります」で終わるAIは他にもある。「何を・どの順番で・どう直すか」まで出るなら払う価値がある——そう判断した。
損益分岐点を計算した
価格を決める前にコストを計算した。
Claude Haiku(Bedrock)のAPIコストは思ったより安い。
| 条件 | 1回あたりのコスト |
|---|---|
| 2,000文字入力(無料プラン上限) | 約¥2.1 |
| 10,000文字入力(プロプラン上限) | 約¥2.7 |
最悪ケース(全ユーザーが毎月フル活用)でも:
| プラン | 価格 | Bedrockコスト最大 | 手残り |
|---|---|---|---|
| スタンダード | ¥500/月 | 約¥51 | 約¥421 |
| プロ | ¥980/月 | 約¥335 | 約¥600 |
余裕で黒字になる計算だった。
ちなみに無料ユーザー1,000人がフル活用してもBedrockコストは月¥6,300。Vercelなど含めた固定費を合わせて月¥9,400。
有料転換率1.9%(1,000人中19人)で黒字になる。一般的なSaaSの転換率2〜5%を下回っても成立する設計になった。
価格は「責任範囲」で決めた
最終的に決めた価格はこれ。
| プラン | 価格 | 主な機能 |
|---|---|---|
| 無料 | ¥0 | 問題指摘のみ・月3回 |
| スタンダード | ¥500/月 | ロードマップ・追加質問・月10回 |
| プロ | ¥980/月 | コスト最適化・月50回 |
¥980にした理由はシンプルで「Claude Codeのサブスク(約¥3,000/月)より明らかに安い」から。¥1,980だと「それならClaude Code使えばいいじゃん」と比較されて負ける。
高くすれば収益は増えるが、その分サポートや責任も増える。個人開発の初期フェーズでは「気軽に払えて気軽にやめられる」ほうが大事だと判断した。
英語対応を最初から組み込んだ
「日本語だけでいいか」という話もした。
結論は「UIを最初から英語対応にする」。理由は市場規模。日本語のみだとユーザーの上限が見えている。
技術的なコストはほぼゼロだった。
system_prompt = """
You are an AWS Well-Architected Framework expert.
Respond in the same language as the user's input.
"""
システムプロンプトを英語で書いて「入力言語に合わせて回答して」と入れるだけ。ユーザーは日本語でも英語でも入力できる。
UIはNext.jsのi18nで切り替えボタンを置く。Stripeは同じ商品にJPY・USDの2つの価格を設定して、UI言語に連動させる。
海外ユーザーには$5・$9で売れるので、¥500・¥980より単価が上がる。英語対応した分だけ収益率が上がる設計になった。
Claude Codeと壁打ちしてよかったこと
一人で考えていたら「月3回制限で有料無制限」という単純な設計のまま進んでいたと思う。
Claude Codeと壁打ちすることで:
- 回数制限の弱さに気づけた
- コストを定量的に計算できた
- 英語展開の判断を素早く下せた
「経営の意思決定」をAIと一緒にやると、抜け漏れが減る。自分の思考の外側を補完してくれる感覚がある。
技術的な実装だけじゃなく、こういう使い方もある。